はじめに
横浜市の小学校高学年女児が、健診の際に服を脱がされて不快だったという投稿が、SNSで話題になっています。
Yahoo!ニュース記事
(削除されていることがあります)
これに対して健診を担当する医者の方からは、
・虐待の有無は皮膚を見ないとわからない
・見逃しがあったら医者が責任を取らされる
・嫌なら自分で病院行って自費で受けてくれ
などの非難、反論がされています。
私は小学校低学年から大学生まで、男子、女子ともに学校健診を担当したことがあります。
その経験から、
・女子の診察に下心はあるのか
・どうするのが最善なのか
今回は下衆な話と、少し真面目な話をします。
筆者の経験談
小学生
小学校の健診は一度だけやったことがあります。
小学2年生でした。
1/3くらいの女子は自分からシャツを上げてくれて、その際は男子と同じように聴診しました。
シャツを上げるのをためらう子には、服の下から聴診器を入れてやりました。
誰もブラジャーは着けていないので、これで不具合なくできました。
中学生
中高一貫校で2回ほど経験しました。
既にほとんどの生徒が下着をつけており、シャツの下から谷間の部分に聴診器を当てておしまい、という流れでした。
みなジャージに着替えており、私服よりはやりやすかったです。
ブラジャーをつけた状態だと、せいぜい大動脈弁(A弁)、肺動脈弁(P弁)領域しか聞くことはできません。
ナース専科HPより引用
不十分ですが仕方ないと思ってやっています。
基本的に聴診は皮膚に直接つけないと、ほとんど聴取できません。
体幹部の皮膚は全く見えませんので、虐待のチェックはほぼできません。
側湾症の検査は「前屈をして後ろから肩甲骨の左右差を見る」というやり方をしますが、これはシャツを着ていても特に問題ないと思います。
高校生
基本的に中学生と同じです。
とある高校では、生徒たちに下着を外すように指導していました。
感覚的には、下着を外させる学校はかなり少ないと思います。
非常にやりやすかったですが、生徒たちはどう感じていたのでしょうか。
聴診する上では先ほどの図の1, 2, 4, 5を聞きたいのですが、この時どうしても手は胸に当たります。
あと5の僧帽弁領域を聞こうとすると、胸の下に聴診器を当てて、上に持ち上げるようにしないといけません。
私はそこまではやらず、1, 2がしっかり聞ければいいやと思ってやっています。
医学的には必要なんですが、訴えられたらどうしよう、という気持ちが強く、「攻めた」聴診はできません。
大学生
大学生、社会人は私服で健診を受けるので、いっそう難しくなります。
下から聴診器を入れても、シャツと一体型の下着だと行き止まりになってしまいます。
時間もかけられないので、私は襟元から聴診器を入れて、先ほどの1か2を聴きにいく、というやり方もよくやります。
かろうじて心臓の「ドクン、ドクン」が聞けたらおしまい、なんてレベルです。
どうしようもない時は服の上から聴診することもありますが、ほぼ何も聞こえません。
えっちな思いなどできない?
こんな感じでやっているので、私は胸を見ることができません。
運が良ければ(?)、手の甲が胸に少し当たるくらいです。
ところで医者は女性の裸を見ても、仕事だから興奮しないと聞いたことはあるでしょうか。
これは半分当たっていて、緊急の処置や手術では、まずそれどころではありません。
また私は子宮がん検診もやっていたことがあるのですが、あれも全く興奮しませんでした。
子宮がん診察の模式図。DIAMOND onlineより引用
ですが学校健診のような平和な場では、私は普通に興奮します。
毎日この仕事やれたらなーなんて思ってます。
個人の感想です。
筆者の考えるベストな健診スタイル
側湾症は着衣で判定。
これが落とし所ではないでしょうか。
もちろんこれでも不快に思う女性は多いでしょう。
過去に、心尖部(左胸の左下あたり)のみで心雑音があった子がいました。
ブラジャーをしているとほぼ聞くことができない場所です。
こういう見逃しを避けつつ、羞恥心にも配慮したのが「下着を外してシャツ着用」だと思います。
ただ着衣だと虐待を見つけることは諦めなくてはなりません。
皆さんはどうお考えでしょうか。
できれば他の先生がどうやっているか教えてもらいたいものです。
まとめ
・筆者は学童から大人まで経験
・下着をつけているとほとんど聴診できない
・「下着を外してシャツ着用」で統一しよう
どんな形であれ、女性の先生や看護師が同席すべきです。
マンパワー的に一対一になることも多いですが、あれはやめてもらいたい。
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