国と病院と医師の懐事情について

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こんばんは、たろうです。

先日、日本整形外科学会で「整形外科と医療経済」をテーマにしたオンライン講演を視聴しました。

低侵襲で合併症のない手術をすることで、患者もハッピーになり、病院の懐も国の懐もハッピーになるという大変興味深い内容でした。

最近、経済学の書籍を読み漁っており、その一つ「教養としての経済学」で医療経済の章がありましたので、私の経験を踏まえ、つづります。

 

病院の役割分担

日本では以前は、ちょっとしたケガや頭痛でも、市中病院や大学病院へ受診することができました。

紹介状なしで大病院受診 追加料金7千円以上に 厚労省:朝日新聞デジタル

一方、海外ではちょっとした健康問題では、まず家庭医という診療所(一次医療機関)に受診し、診察・検査・治療を行い、診療所で手に負えない病状の場合、中小病院へ紹介(二次医療機関)、さらに重症の場合は大学病院などの3次医療機関へ紹介するという医療提供の形になっています。

軽症は診療所で、重症は大病院でという役割分担ができれば、顔見知りの先生がなんでも診てくれれば状態の変化に気が付きやすいというメリットがあります。医療者目線でも、家庭医は一般診療に専念し、専門医は自分の分野の診療に集中することができます。

診療報酬制度

海外の家庭医制度のある地域では、1つの家庭医のところには2000人の住民が登録されています。実際に受診するのは、その一部ですが、患者が来ても来なくても、診療所の運営が成り立つように診療報酬制度が作られています。

一方、日本の外来診療は行った検査や治療がすべて医療機関の売り上げになる「出来高払い制度」になっているため、患者が来ないと赤字になってしまうし、1人の患者にたくさん検査や治療を行うほど利益を得やすいのです。

いい医者ってなんだ?

私は常々、高額な検査をしなくても、問診や診察で診断・治療ができる医師が「良い医師」だと考えています。しかし、患者目線では患者の希望を叶える医師が「いい医師」の場合があります。

例えば、転倒して頭をぶつけた少年が頭痛を訴えてお母さんと受診してきたとします。患児は診察室を元気に走り回っていますが、お母さんは頭のことが心配で、頭部CT検査をしてもらうために病院へ連れてきたようです。担当医は診察上、脳出血や頭の骨折を起こしている可能性は低かったため、放射線被ばくの影響を考慮し検査をしないことを提案しました。しかし、お母さんからの強い希望でCT検査を行い、検査結果は正常でした。担当医は自己の説得力の不足を悔やみ、患児に対し申し訳なく思うのでした……

患者満足度

この例を患者満足度の観点からみると、診察で検査の必要性を評価し、母親を納得させる説明ができる「いい医師」であれば、この子の被ばくは避けられたでしょう。しかし、母親の要求を無理に却下したのであれば、「患者の希望を聞いてくれない医師」として、レビューサイトに悪評を書かれてしまう恐れがあります。

医療経済

次に医療経済的な観点からみると、昨今散見される小児医療を無償にしている自治体で上記のケースの場合、CT検査を行うことで患者の懐にダメージはなく、病院の懐は潤うが、その医療費は自治体や国が負担することになります。

患者目線では納税しているのだから、その見返りに公共サービスを受ける権利はあります。しかし、その場で自己負担が生じなくとも、巡り巡って増税という形で自己負担が返ってくる可能性も考えなければならなりません。

いい医者の姿勢

そして、医師の診療姿勢の観点からみると、医師の問診・診察のみで診断を確定し治療をするよりも、あれこれ検査をやって診断をした方が病院の利益になるため、日本の診療報酬制度では問診や診察の重要性が薄れてきます。

まとめ

大病院への紹介状なしでの受診は追加料金負担、月に2回以上のCT・MRI検査の場合は診療報酬が減額など、医療費削減に向けた政策は行われています。しかし、現場の医師や患者の考え方次第で検査や処置の数は大きく変動します。

医師が問診や診察を重視し、患者も問診・診察で疾患を言い当てる医師を「いい医者」と考えるならば医療費は削減されるでしょう。

逆に医師が自己の利益のために検査や処置を重視し、患者も問診や診察だけで何の検査や処置をしないことに不満、物足りなさを感じるなら医療費は増大するでしょう。

これから、高齢社会で起こる医療費の増大という問題について政治家や厚労省職員、経済学者に任せるだけではなく、国民全員が向き合っていく必要があります。私自身も診療報酬について意識をして診療、受診をしていきたいと思います。知識や説明の仕方に加えて、詳細な診察の見せ方も大事になりそうですね。

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