デュアルモメンタム投資について 理論、実践法など総まとめ

デュアルモメンタム

目次

 

今まで約10回記事を上げてきた、私の投資手法の中心であるモメンタム投資法についてひと記事にまとめました。

これを読めばモメンタム投資がわかる!を目標に書いていきますので、気になるところだけでも良いので、読んでみてください。

 

はじめに モメンタム投資を始めたきっかけ

大学の学費をようやく払い終え、2020年のコロナショック後から、本格的にインデックス長期投資を始めました。

ただインデックス投資を、大暴落が来てもひたすら続けられるかという不安もありました。

モメンタム投資シリーズ prologue

その後もっと良い投資方法はないかと探していくうちに、「ウォール街のモメンタムウォーカー」という本に出会いました。

ウォール街のモメンタムウォーカー | ゲイリー・アントナッチ | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

そこから自分で調べていくうちに、自分に合った投資法だと思い、2021年初頭から開始しました。

 

モメンタム投資とは

モメンタム投資とは順張り投資の一種で、トレンドフォローとも言われます。

ざっくり言うと値段が上がればモメンタムがあると考え買い、下がればモメンタムが失われたとして売ります。

売買のイメージとしては下の図のようになります。

 

順張り投資のイメージ SBI証券HPより

 

「高く買って安く売る」

こう聞くとなんだか違和感ありますよね。

しかし612ヶ月程度のモメンタムは、その後13ヶ月程度持続するという研究結果は、古くは80年以上前から多数見られています。

人間が持つさまざまなバイアスによって、このモメンタムは今後も存在し続けると考えられています。

モメンタム投資シリーズ1

 

例えば先ほどの高く買って安く売る、普通はこんな事したいと思わないでしょう。

こういった心情は普遍的なもので、これで儲かる傾向があるとわかっても、なかなか実行に移す人がいないのです。

 

絶対モメンタムと相対モメンタム、デュアルモメンタム

モメンタムは大きく2つに分類することができます。

それが絶対、相対モメンタムで、その2つの組み合わせはデュアルモメンタムと呼ばれています。

 

絶対モメンタム

ある株や商品が、あらかじめ決めた期間の前(半年や1年前など。ルックバック期間という)に比べて高ければ買い、安ければ現金か債券を持つ

モメンタム投資シリーズ2 絶対モメンタムについて

S&P500と米長期国債で絶対モメンタムを行ったバックテスト↓

S&P500, 米長期国債の絶対モメンタム(ルックバック期間は1、3、6ヶ月)

 

最大下落幅(1)が大幅に減少しています。

結果としてリスク(=ボラティリティ、標準偏差)(2)も減少して、安定したリターンが期待できることが分かります。

 

相対モメンタム

2つ以上の商品を候補として、あるルックバック期間で、より上昇率が高いものを買う

モメンタム投資シリーズ3 相対モメンタムについて

S&P500と非米国全世界小型株で相対モメンタムを行ったバックテスト↓

S&P500と非米国全世界小型株の相対モメンタム(ルックバック期間は1、3、6ヶ月)

 

絶対モメンタムと違い、リスクの減少は見られません(1)

一方リターンは改善しており(2)、適宜強い株に乗り換えて、高いリターンを得られていることが分かります。

 

デュアルモメンタム

2つ以上の商品(例えば米国株と日本株)を候補として、上昇率の高いものを買い、どちらもマイナスならば現金か債券を持つ

デュアルモメンタムのフローチャート(ルックバック期間12ヶ月の場合)

モメンタム投資シリーズ4 デュアルモメンタムについて – shotaro37のブログ

 

S&P500と非米国全世界小型株、米長期国債でデュアルモメンタムを行ったバックテスト↓

デュアルモメンタム(ルックバック期間は1、3、6ヶ月)

 

上記二つの利点が活かされており、高いリターンが出ています。

まとめると、絶対モメンタムはリスク(ドローダウン)の減少相対モメンタムはリターンの向上に寄与します。

結果としてリスクを抑えつつ、リターンを伸ばすことが期待できます。

 

モメンタムに用いるアセット(銘柄)の選び方

特に何を使うべきかについては決まりがありません。

国によらず、商品によらず、また時代によらずモメンタムは存在すると言われています。

選び方は自由でいいと思います。

 

いくつか例を挙げると、

・上記と同様に、S&P500、非米国全世界小型株、米長期国債のデュアルモメンタム

・米国株、日本株、ゴールド、米長期国債を均等保有し、それぞれに絶対モメンタムを使用

・米国セクター別ETF10種から、上昇率の高い34つを保有し、毎月入れ替える(相対モメンタムを使う)

・上の相対モメンタムに加えて、S&P500がマイナスの時は債券 or 現金保有 (デュアルモメンタムの変形)

米国セクター別ETF https://haitoukabu.com/etf-us/sector.html

 

個別株に対してモメンタムを使っている投資家もいますが。私はやってません。

理由は個別株はインデックスと比べて、期待リターンは同じで、リスクは高い(=シャープレシオが低くなる)からです。

 

それに銘柄分析能力もないので。

 

モメンタムに使うルックバック期間について

多くの研究では、ルックバック期間は12ヶ月が使われてきました。

簡単に言うと、1年前の価格より高ければ買い、安ければ売り

一方で、いくつかの期間を組み合わせた方がリターンが上がるという報告もあります。

色々考えた末、私は主に36ヶ月の複合ルックバック期間を使うことにしました。

 

詳細についてはこちら

モメンタム投資シリーズ7 モメンタムの改良について 期間の改変、検証

モメンタム投資シリーズ8 モメンタムの改良について 期間の改変2

 

S&P500(VOO)、非米国全世界小型株(VSS)、米長期国債(VGLT)の対するフローチャートがこんな感じになります。

デュアルモメンタムのフローチャート

傾向として、上昇基調にあるものは期間が短い方が結果は良く、下落トレンドでは期間が長い方が良い結果となりやすいです。

しかし期間を不用意に変えるのは、over fittingの危険があるためやめた方が良いでしょう。

over fitting:

シミュレーション結果を良くするため、パラメータなどを変えてしまうこと。結果的に実際のパフォーマンスは落ちてしまうことがある

 

モメンタム投資の課題

モメンタム投資シリーズ5  モメンタム投資の弱点について

ボックス相場では逆効果

ボックス相場では時に、以下のように高値づかみになってしまう事があります。

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インデックスに劣後する期間がある

モメンタム投資はとても単純なテクニカル投資です。

インデックス長期投資から離れたやり方なので、当然対象指数に負ける事もあります。

ただそこでやめて他の方法へ流れてしまうと、期待していた利益を手放してしまうことになります。

一度決めたらそれを継続することが大事です。

なかなか実践するのはとても難しいですが…

 

NISA、iDeCoの非課税枠が使えない (使いづらい)

モメンタム投資では、やり方にもよりますが、年1-4回程度の売買が発生します。

そのため、長期保有を前提とした税優遇制度が使えません。

一般NISAで買うというやり方もありますが、これも十分には活用できません。

私は積立NISAiDeCo枠を使った上でモメンタム投資をしています。

が、自分にもしそこまで投資資金がなかったとしたら、半分をNISA、半分をモメンタムに充てるなどすると思います。

 

ルックバック期間を変えた時のリターンの変化

歴史的に12ヶ月が多用されてきていますが、私はそれを使っていません。

自分がover fittingに陥っているのか、正しい判断だったのか

数年〜10数年後に結果が出るでしょう。

 

結論

デュアルモメンタム投資はインデックス長期投資に一手間加えるだけで、リスクの減少、リターンの増加が期待できる投資法です。

一度決めてしまえば、必要な手間は月に数分で済みます。

インデックスを超えるリターンを追求したい方は、ぜひご検討ください。

またいろんなやり方や、他の考えなどあれば是非教えてください。

 

参考文献

絶対モメンタムについて by Gary Antonacci

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2244633


デュアルモメンタム(
GEM)について by Gary Antonacci

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2042750


上記の著書「ウォール街のモメンタムウォーカー」

https://amzn.to/3NjxExY

Antonacciのデュアルモメンタムを変形させた、Accelerating Dual Momentum(ADM)を提唱しているサイト

https://engineeredportfolio.com/2018/05/02/accelerating-dual-momentum-investing/


バリューとモメンタムはさまざまな国で、多くのアセット
(商品)で幅広く見られる事を示した論文 by CLIFFORD S

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2174501


1801
年からモメンタムが存在する事を示した論文 by CHRISTOPHER GECZY

http://www.cmgwealth.com/wp-content/uploads/2013/07/212-Yrs-of-Price-Momentum-Geczy.pdf


分散投資とモメンタム投資を組み合わせた場合のリスク、リターンを多く考察している 
by Meb Faber

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=962461

 


さまざまなポートフォリオを用いて、時に絶対モメンタムを交えて比較している。継続することの必要性やメンタルなどについても言及 
by Meb Faber

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2801856


さまざまな国で絶対モメンタム
(Time-Series  momentum)、相対モメンタム(Cross-Sectional  momentum)を比較している by Ron Bird

https://www.uts.edu.au/sites/default/files/FDG_Seminar_150408.pdf


分散されたポートフォリオに、絶対モメンタムを使う事でリターンが安定するという内容 
by Tobias J. Moskowitz

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2089463


アクティブ運用
(いわゆるスマートベータ)ETFは、上場後期待されたパフォーマンスを出せないという論文 by Shiyang Huang

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3622753


分散してポートフォリオを組んで、モメンタムを使用してリターンを確認している 
by Kris Longmore

https://robotwealth.com/dual-momentum-review/


デュアルモメンタムについていくつかの補足と注意点などを
HP上で解説 by Gary Antonacci

https://www.optimalmomentum.com/2018/04/09/common-misconceptions-about-momentum/

 

https://dualmomentum.net/2019/01/17/whither-fragility-dual-momentum-gem/


モメンタム投資のさまざまな検証ができるツール

https://www.portfoliovisualizer.com

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