こんばんは、たろうです。
今回は日本人が読んだら、日本企業の生産性が向上してしまうからという理由で、翻訳が禁止されていた、アメリカのビジネス書「The Goal ザ・ゴール」を振り返ります。
もともと工場の生産性向上ソフトを売りたかったイスラエル出身の物理学者の著者が、ソフトの布教目的に出版した本書がストーリーの面白さと実用性で爆発的人気となり、逆にソフトが売れなくなってしまったという。
500ページ以上ありますが、読書嫌いな私でも読破できるストーリー展開で、問題解決の方法、工場のマネジメントについて学べる良書でした。
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あらすじ
閉鎖通告
工場長のアレックスは自分の工場に工作機械を導入し生産性が向上したと考えていたが実際には工場内は部品の在庫があふれ、受注に対して納期遅ればかりで、本部から、3か月以内に改善しないと工場閉鎖だと宣告される。
恩師と再会
出張先の空港で大学の恩師ジョナに出会い、自分の直面している悩みを伝えるとジョナは、「君の工場の目標(ゴール)は何か?」と漠然とした質問を投げかける。
ジョナは1つの工程の部分的な効率化ではなく、大切なことは工場全体の効率化が必要だと考えているが、答えはすべて教えず、ヒントをくれる先生を演じる。
アレックスはこの問いの、お金を儲けること、という答えを出すが、具体的に儲けの指標がわからない。再度ジョナに相談し、①スループット:完成品を販売して得る収入、②在庫:工場内にたまっているお金、⓷業務費用:材料を製品に変えるための費用、これらで収益を評価することを教わる。
夫婦に亀裂
工場閉鎖を回避するためアレックスは毎晩工場に残って、帰りが遅いため、妻のジュリーの不満がたまっていく。
ハイキング
アレックスは家族サービスをしなければと、息子のデイブとボーイスカウトのハイキングに同行する。山頂までの細い道のりで、一列に並んで歩く子供たちのペースはマチマチで、しんがりを務めるアレックスはこれを眺めて考察する。大きな荷物を持ったハービーはペースが遅く前の子供から大きく離されており、ハービーの後ろは渋滞している。先頭でどんどん前に進む子供、カバンから水筒を出して立ち止まる子供、遅い前の子を追い越す子供、いろんな要因で列はどんどん長くなり、最終的にはハービーとアレックスが最後尾で先頭が見えなくなってしまった。
ハービーを先頭にして、追い越しを禁止にしてみたところ、みんながペースが遅いと不満を漏らすようになり、一行の進行はハービーのペースに依存していることが分かった。
いまのペースでは日没までに目的地にたどり着けないと考えたアレックスはいったん子供たちを集める。ハービーの荷物を余裕のある子に分散させ彼のペースをアップさせ、順番を変えないように、手をつないで一定の間隔で歩くようにルールを作ることで、列の進行ペースは上がり、予定通りの時間に目的地に到着できた。
家族サービスとしてハイキングに同行し、思わぬ副産物を得たアレックスであったが、その妻は仕事一辺倒の夫に嫌気がさして、実家に帰ってしまう。
ハービーを探せ
工場内での製造工程で、処理能力の低いものをボトルネックと呼ぶ。ハイキングのようにボトルネックを先頭にもってくることは工場ではできない。処理能力の低い工程が工場全体の生産速度を規定するので、ボトルネックが休止している時間をできるだけ減らし、ボトルネック工程をほかの機械や手作業で分担することで、全体のスループットを増やすことができた。
また品質管理QCにてボトルネック工程の後に、不良品として破棄するのは無駄なので、ボトルネックの前にQCを持ってくるようにした。
さらに1つのバッヂのサイズ(生産個数)を小さくすることで部品の循環のしやすくし、在庫の貯留を予防する。
これらを行うことでアレックスの工場はスループットが増加し、たまっていた納期遅れの受注を消化し、工場内の在庫も激減し、業績が大きく伸びた。
余計な在庫を作ることはしないめに、ボトルネック以外の機械や従業員は暇な時間ができることがあり、部分生産性向上と逆行するようなこの改革を導入することに部下は初めは消極的であったが、恐る恐る導入してみると、徐々に効果が出てくることで、自分たちの改革に自信がついてきた。
復縁
ボトルネックを通過し組み立て工程に入る製品の速度が予測できるようになり、部品の仕入れ、投入も計算できるようになり、次第にアレックスの実働時間は減り、家族との時間が増え、夫婦仲も改善していくのだった。
そして、アレックスは工場長から本社に栄転となり、各工場を束ねるマネージャーを任されることとなる。
①ボトルネックを見つける
②ボトルネックの活用(休止時間を減らす)
⓷ボトルネックのペースに、ほかの工程も合わせる。
④ボトルネックの能力を高める
⑤ボトルネックが解消したら①に戻る
マネージャーとして問題点の見つけ方。
自分の工場での全体効率化を達成したアレックスは、ほかの工場の生産性改善を任されるようになるが、ほかの工場の問題点の見つけ方がわからないという壁にぶつかる。
基本的な問題の見つけ方、解決法は工場でボトルネックを見つけることと似ているが、ボトルネックが物理的な作業工程であればわかりやすい。もっと根幹の生産管理のポリシーが間違っているときこれを正さなければいけない。
まとめ
ジョナからのあいまいなヒントをもとにアレックスがもがき、夫婦の軋轢・復縁を経て、最終的に工場を立て直すサクセスストーリーのなかで、生産管理や全体効率化の考え方が学べる良書でした。日々の業務で、優先順位をつけて処理することを改めて認識させられました。
二次産業従事者でなくとも楽しめる1冊なのでお勧めです。何よりスタバで読んでいると格好がいい本だと思います(笑)。
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