前回までのまとめ
・インデックス長期投資を志していたが、モメンタム投資に出会う
・モメンタム投資の歴史、それを支持する人間のバイアスについて
ここで取り上げるモメンタム投資は、大きく2つに分けられます。
それが絶対モメンタムと相対モメンタムで、これら2つを組み合わせた投資法がデュアルモメンタムと呼ばれます。
以前の記事に貼り付けたこのグラフは、デュアルモメンタムのやり方になります。
今回は絶対モメンタムについて説明していきます。
以下に貼り付けたグラフは全てGary Antonacci氏の
Absolute Momentum: A Simple Rule-Based Strategy and Universal Trend-Following Overlay; April 10, 2014
から引用しています。
この論文は絶対モメンタムだけについて書かれた、33ページに及ぶ大作です。
今回の記事も多くはこの論文からヒントを得ています。
・絶対(absolute)モメンタム
これは売買する資産(日経平均やS&P500など)決め、過去の価格と比較して売買タイミングを決めるやり方です。
最もよく使われる、12ヶ月の絶対モメンタムを例に取ると、毎月決まったタイミング(月末など)に12ヶ月前の価格と比較して、その時の価格が高ければ買い(ホールド)、低ければ売り(ポジションなし)を繰り返すというやり方になります。
この12ヶ月をルックバック期間と言います。
そのままホールドするよりも手間や手数料などは問題になりますが、
・1ヶ月で5分もあれば終わる
・実際の売買はそこまで多くない(S&P500の場合、年平均1.3回程度の売買)
なので、運用は難しくありません。
ウォール街のモメンタムウォーカーの中では、対象となる資産を保有していない期間は、米国短期国債に投資をするという方法をとっていました。
別記事で解説しますが、長期国債の方がリターンは高くなります。
これが絶対モメンタムを使った米国株の長期推移となります。
(w/Abs Momとはwith absolute momentum)
特筆すべきはリターンの違いよりはむしろ、下落が小さい点です。
2008−09年のリーマンショックなどを避けることができているのがわかります。
これは米国株に限った話ではなく、非米国株、債券、金、REITなどで同様の傾向(下落の回避)がみられます。
その結果max drawdown(最大下落幅)の大幅な改善、シャープレシオの改善が期待できます。
S&P500やREIT、Goldや長期国債などを組み合わせ、それぞれにモメンタムを使うと、以下のように非常に安定したリターンが期待できます。
比較に使われているのは株式60、債券40の割合で分散されたポートフォリオなどです。
伝統的に安定したパフォーマンスを得られる比率だと言われていますが、安定性、リターンいずれも大きくモメンタムが凌駕しています。
私の考えるインデックス長期投資の最大の問題は、リーマンショック級の下落にどこまで耐えられるかだと思っています。
その時の痛みは実際に経験しないとわからないと思いますが、このモメンタムを使ってリターンを損なわずに下落を回避する。
これが私が最も魅力に感じているポイントです。
次回は相対モメンタムについて説明します。
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