目次
はじめに グローバル3倍3分法ファンドについて
これまでいくつかファンドの紹介をしてきましたが、どれも明らかなゴミファンドでした。
今回初めて、買う価値あり!と感じたファンドをご紹介します。
それがグローバル3倍3分法ファンドというものです。
日興アセットマネジメントから出ているバランス型ファンドで、隔月分配型と、1年決算型があります。
隔月分配型はいわゆるタコ足配当なので、今回は1年決算型を検討します。
この一年は純資産を大きく減らしていますが、それでも2021年4月現在、両ファンド合わせて約3800億円の純資産があります。
経費率は目論見書で 0.484%/年とあり、実質コストは 0.56%/年でした。
アクティブファンドとしては良心的だと思います。
買付手数料もかかるようですが、楽天証券やSBI証券なら無料で購入できます。
ファンドの特徴
このファンドの最大の特徴は、レバレッジをかけて海外債券に投資しているというところです。
運用資金の3倍に相当する株や債券などを保有するという戦略です。
その理由は以下の通りです
・3倍のレバレッジをかけると、リスクが株100%と同じになる
・結果として期待リターンを最大化できる(シャープレシオが最大であるため)
つまりこのファンドは、株式と同じリスクで、より高いリターンが期待できるよ、といっている訳です。
(厳密にはREITも入っているのでこれほど単純ではないですが、REITも株式とほぼ同じリターン、リスクである事から、近似的に考えることはできます)
株式:債券比率のシミュレーション
債券の割合を高めにしたポートフォリオが、シャープレシオ最大になるというのは有名な話です。
Portfolio visualiserを使ってシミュレーションしました。
使うのは全米株式と米10年物国債。
このように年間のリターンと、リスク(=ボラティリティ=標準偏差)、シャープレシオが表示されます。
1972年までのデータこれらを11通り作って表にしてみました。
結果は株式の比率が高いほどリターンは向上します。
一方シャープレシオは、株式 : 債券が 4:6 の時に最大になりました。
グローバル3倍3分法ファンドの主張と大体一致します。
株式 : 債券. |
リターン |
シャープレシオ |
10 : 0 |
10.73 % |
0.44 |
9 : 1 |
10.55 % |
0.46 |
8 : 2 |
10.32 % |
0.48 |
7 : 3 |
10.04 % |
0.50 |
6 : 4 |
9.72 % |
0.53 |
5 : 5 |
9.36 % |
0.54 |
4 : 6 |
8.96 % |
0.55 |
3 : 7 |
8.53 % |
0.53 |
2 : 8 |
8.05 % |
0.48 |
1 : 9 |
7.53 % |
0.41 |
0 : 10 |
6.98 % |
0.32 |
運用開始からの結果
設定来からのリターン2021年4月9日現在で+46%と、同時期のS&P500 +37%(円ベース) を上回っています。
またコロナショック時の下落率は 37%で、ほぼ株式と同じでした。
S&P500の下落率は 34%
概ね、運用開始前の目論み通りのリターンと言えます。
注) アクティブファンドは運用開始前の見通しと、実際の結果が大きく乖離することが多い
2年半と短いですが、見通し通りのリターン、リスクを実現しているのは立派です。
課題 先物部分のレバレッジが高過ぎないか
運用資産の20%で、国内株式先物20%、国内、海外債券先物200%を購入するとあります。
国債のリスクを知るためには、duration(償還期間)の情報が必要です。
(期間が長い方が金利変動の影響を受けやすく、リスクが高い)
最も比率の高いは先進国国債で、基準となる指数はFTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース)です。
これの平均durationは7.8年なので、このファンドの債券部分もこれに近いdurationと考えられます。
durationは利回り1%の変化に対しての価格変動を表すので、債券利回りが1%上昇すると、債券価格が7.8%低下します。
もし債券利回りが 1%上昇して、日本株が2割下げたとします。
すると証拠金は、
200 × 0.078 + 20 × 0.2 = 19.6
もともとあった20%の証拠金は、ほとんど吹っ飛んでしまいます。
こうなると追証もしくはロスカットとなり、ファンドの前提が破綻してしまいます。
コロナショックではこれに近い状況が起きたはずですが、トラブルは起きませんでした。
リバランス(現物の売却)で対応できたと考えられます。
今のところハイレバレッジでも問題なさそうです。
結論
最初に書いたように、このファンドは「買い」です。
コロナショック時の下落が投資家の予想より大きかったためか、最近は資金流出が進んでいます。
しかし最もシャープレシオの高いポートフォリオを、レバレッジをかけて行い、これまで2年半結果を出しているのは素晴らしいと感じます。
実質コストは0.56%/年ですが、レバレッジを使って先物取引をして、各資産のバランスを取っていることを考えれば、決して高くないと思います。
まとめ
・株式と同リスクで、高リターンを目指す
・極めて理論的であり、かつこれまで実行できている
・コストも高くない
同系列で5.5倍ファンドもありますが、実質コストが1.18%、ほとんどが先物運用で今後が不透明、という理由でお勧めしません。
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