HPV (子宮頸癌) ワクチンについて 男性も必須 9価ワクチンがおすすめ

医学

目次

はじめに

新型コロナワクチンの接種が本日より始まりました。

諸外国に比べて遅い開始となりました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210217/k10012871711000.html

接種が進んでいるイスラエルでは、発症、重症化など非常に効果的であると結果が出つつあります。

https://www.bbc.com/japanese/56079828

日本は以前からワクチン接種に消極的で、時に諸外国の批判を浴びる事があります。

そこで今回はコロナワクチンではなく、HPV(子宮頸癌)ワクチンについて書いてみようと思います。

なぜかというと、HPVワクチンは日本で最も接種が進んでいないワクチンの一つで、私は普段から子宮頸癌の診療に携わる事が多いので、思うところ多かったからです。

結論としては、欧米並みに接種が進んで欲しいという感想になります。

あと産婦人科学会のHPを見ていただければ、私の記事など読まなくて良いです。

https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4

一応順序立てて説明していきます。

HPVとは

HPVとはhuman papilloma virusの略で、ヒトパピローマ (乳頭腫ウイルスと訳されます。

HPVは性行為によって感染し、感染するとその一部が尖圭コンジローマ(性器にイボができる病気)や、子宮頸癌(子宮頸部: 子宮の根本の部分で、膣につながっている)の原因になります。

年代にもよりますが、女性では約20%が抗体陽性(既感染)と言われています。

そのほとんどは自身の免疫によってウイルスは排除されますが、ごく一部が持続感染し、がんを引き起こします。

子宮頸癌について

子宮頸癌 (けいがん) は検診や不正性器出血などで発見され、ステージなどによって手術、化学療法 (抗がん剤)、放射線治療が選択されます。

日本では年間約1万人が子宮頸癌と診断され、約2800人がそれにより亡くなっています。

この癌の恐ろしい点は、20代の若い女性でもなる可能性がある事です。

罹患率 (りかんりつ: 病気にかかる割合20代後半から急増し、40代でピークを迎えます。

他の代表的ながんである胃がんや大腸がんなどとは大きな違いがあります。

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子宮頸癌の年齢別罹患率

HPVワクチンについて

HPVワクチンは上述の尖圭コンジローマや子宮頸癌を予防するためのワクチンです。

HPVは数十もの型があり、この中で尖圭コンジローマに関係するのは6,11型で、子宮頸癌に関係するのは16,18,52,58型などがあります。

アメリカで2006年 (ガーダシル)、日本では2009年 (サーバリックスに最初のワクチンが承認され、その頃より各国で集団接種が始まりました。

2014年にはHPV 3133455258型に追加対応とした9価ワクチンのガーダシル9がアメリカで承認され、日本では20207月にシルガード9として承認されました。

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現在アメリカでは女性が50%以上、男性は20%以上の接種率となっています。

ワクチンの接種時期

HPVワクチンは既に感染したウイルスを排除する効果はないため、初交前の接種が効果的です。

成人に接種してもある程度(5割程度)の発症予防にはなるとされています。

日本では小学校6年生~高校1年生相当の女子が定期接種の対象となっています。

副反応の大報道

2010年ごろから日本でも接種が広がり、1996-99年生まれの女児の摂取率は75-80%まで普及しました。

ところが朝日新聞などが20134月頃からワクチン接種後の体調不良を報じるようになります。

(車椅子に乗った少女をメディアでご覧になった事がある人もいると思います)

結局国は同年に積極的な勧奨を差し控えることになりました。

産婦人科学会などが周知に努めてはいますが、その後現在までこの方針は変わっていません。
→ 2022年4月にようやく積極的な勧奨が再開されました。

HPVワクチン 積極的な勧奨が再開 | お知らせ | ニュース | 自由民主党
子宮頸がん等の原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を予防する「HPVワクチン」の積極的な勧奨が、今年4月から再開され、約9年ぶりに小学校6年~高校1年相当(12~16歳になる年度)の女性...

日本で接種が進まない理由

予防接種は行ったところで、効果を実感できるわけではありません。

しかも子宮頸癌は、上のグラフのように40代が罹患率のピークです。

つまり疫学的に最も効果が見られるのは、HPVワクチンを接種してから30年先ということになります。

これだけ遠い将来の利益は、現在まで続く世間の潮流を変えるには至らないのでしょう。

副反応について

どのワクチンにも副反応というものが存在します。

代表的なのは発熱やアレルギー反応などがあります。

2013年頃の日本ではHPVワクチンについては脱力、不随意運動、記憶力低下などが大々的に報じられました。

イギリスでギランバレー症候群が増えたとする論文もありましたが、現在WHOはその関連を否定しています。

 

https://www.who.int/vaccine_safety/committee/topics/hpv/June_2017/en/

日本では名古屋studyと呼ばれる大規模調査が行われました。

これは2010年から2013年までの間、HPVワクチンを接種していた年代の少女71000人余りを対象に、関連が疑われる24の症状を調べた論文です。

ここでは月経不順、歩行障害、記憶力の低下などが調べられ、いずれもワクチンに関連するとされる症状は見られなかったと結論づけられています。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29481964/

男性も必要

私は男性にも接種が必要だと考えています。

理由は大きく二つあります。

一つは女性に感染させないため。

性行為は(多くの場合)男性と女性が行う物なので、女性のために接種する意味があります。

もう一つは男性もHPVを原因にがんになることがあるからです。

肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんなどが挙げられます。

どれもなりたくないですよね。

これらの理由によって、アメリカ、メキシコ、オーストラリアなどでは男性への接種が認められています。

私の考えのまとめ

HPVワクチンについては科学的なデータは出揃いつつあります。

あと10年もすれば、ワクチン最大の目標である子宮頸癌死が減少する、というデータが欧米から出てくるでしょう。

その頃日本では接種が進んでいるのでしょうか。

原発の処理水放出のニュースといい、なかなか科学的な議論が進まないこと、それにより大きな被害がもたらされることは非常に歯痒いです。

https://kahoku.news/articles/20201229khn000027.html

20211月現在、まだ日本で9価ワクチンの接種は公費助成がありません。

私は、仮に自己負担であっても、将来自分の子供に9価ワクチンを接種させようと思っています。男の子であっても。

とはいえお金もかかりますし、広くおすすめできるのは、公費助成がある2価ワクチンを接種することだと思います。

まとめ

・日本はワクチン接種が進まない

HPVワクチンは男女とも必須

・特に9価ワクチンがおすすめだけど、公費負担の2価ワクチンでも良い

・常に科学的な視点を持って考えよう

機会があったら、子宮頸癌についても書こうと思います。

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