先進医療特約は不要 専門医の視点で解説

医学

目次

はじめに 先進医療とは

一般に医療は保険診療と自由診療に分かれます。

そしてこれらを同時に行うことはできません。全て自由診療となり、全額自己負担となります。

(混合診療の禁止)

しかし一部例外があり、それが先進医療です。

認められた治療・検査の先進医療部分だけを全額自己負担し、残りは保険診療で行うことが可能になります。

その対象治療・検査は以下の通りです。

先進医療Aの該当技術名 厚生労働省HPより

見ても全く分かりませんよね。笑

簡単に言うと、ごくごく一部の診療がこの先進医療対象だということです。

そしてこの自己負担分をカバーするのが、民間医療保険の中の先進医療特約となります。

今回はこれについて少し解説します。

そもそも民間医療保険は不要

最近いわゆる金融リテラシーが高い人の間で、民間医療保険はいらないと言われてきています。

私も民間の保険には入っていません。

生命保険料控除目的に明治安田生命の「じぶんの積立」に入っているだけです。

今回の話は民間医療保険の付帯の話なので、そもそも保険に入っていない人には関係ない話です。

しかし既に加入している保険がある場合、あるいは保険そのものの考え方などに応用できると思います。

先進医療特約で、保険料はいくら変わるのか

チューリッヒ生命 「終身医療保険 プレミアム DX」でシミュレーションします。

40歳男性、保険料は65歳払込満了でシミュレーションします。

契約内容はデフォルトのままで、先進医療特約の有無で比較します。

医療保険 先進特約あり
医療保険 先進特約なし

年間2,109円の違いとなりました。

25年間の払い込みで、総額52,725円を支払うことになります。

さて、この金額は価値に見合うものなのでしょうか。

高額なのは粒子線治療だが…

先程の表の中で、多くの人が関係するところで、かつ多額なのは粒子線治療(陽子線・重粒子線)でしょう。

つまりこれを使う可能性があるかどうかで考えていけば良いということになります。

粒子線治療は一連の治療で300-400万円程度かかります。

これだけお金がかかると先進特約はあった方がいいように思えます。

しかしこれには大きな問題が2点あります。

先進特約が不要な理由

粒子線治療は必須ではない

放射線治療は保険診療のX線でも十分治療することができます。

仮に先進特約に入っていなかったために粒子線治療が受けられなくなったとしても、大きく治療効果を損なうことはないと考えます。

また施設によっては粒子線の扱いに慣れたスタッフが少なく、かえって悪い治療となってしまうこともあります。

先進医療の対象は毎年変わる

粒子線治療領域の先進医療の対象疾患は毎年変わります。

近いうちに先進医療から粒子線治療そのものが消える可能性すらあります。

(全ての疾患が保険診療か自由診療に分類される)

漠然とした不安で加入するのはやめよう

月々200円足らずで加入できる先進特約、生命保険に加入する人なら入りたくなるでしょう。

しかし制度そのものが難解であるだけでなく、その将来も不確定なものです。

私は民間保険そのものが不要だと考えていますが、一度契約してしまった保険を解約するのは非常に心理的ハードルが高いでしょう。

しかしその契約に先進特約がついていたら、あるいは他に過剰と思われる保険内容となっているのなら、一度見直しをお勧めします。

まとめ

・先進医療について説明。粒子線治療主体の制度といえる

・先進特約は制度の不確かさ、粒子線治療の効果から不要と考える

・もし医療保険に入っているなら、内容を見直してみよう

おまけ 粒子線治療について簡単に

強い放射線を当てると細胞は死滅します。

これをがん細胞にめがけて当てることで治療するのが、放射線治療です。

これまでその放射線はX線(レントゲンとかCTに使われるアレです)が使われてきました。

しかし粒子線(実際には陽子か炭素イオン)を使う手法も普及してきました。

粒子線はその物理学的に、周囲への余分な放射線が少ないという特徴があります。

頭の腫瘍に対する照射範囲の違いが以下のようになります。

頭蓋内脊索種の治療計画の違い(X線 vs 重粒子線)

一般的に語られない粒子線治療の弱点として、準備により時間を要します。(2週間程度)

また体型の変化や腫瘍の増大、縮小が起こると、照射計画を作り直さなくてはいけません。

準備に時間がかかるということは、その修正にもより時間がかかることを意味します。

その間は不完全だとわかっていながら治療を継続するか、中断するかの判断となります。

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