- はじめに 株式の年率リターンは7%くらい??
- インフレ調整という考え方
- インフレ調整後のリターン 年率2.99%
- 税金やコストを考慮すると 1.78%/年と、悲惨な結果に
- 資産運用の考え方を変えるべき
- まとめ
はじめに 株式の年率リターンは7%くらい??
みなさん、株の長期リターンって年率何%くらいだと思いますか?
期間や国によって全然違いますが、全世界株や米国株の長期リターンは年率 7%くらいと考えている人、多いんじゃないでしょうか。
私がよく視聴しているYoutuber の MoneySenseCollegeは、会員制クラブの名前を「チーム 7%」と名付けています。
今回は世界で最も重要な株価指数、S&P500を参考にします。
実際のリターンで言うと2021年7月現在、S&P500の過去30年リターンは年率9.9%でした。
S&P500のリスクリターン
『S&P 500 (配当込み) (円) インデックス』 |株価指数
また1927年以降のS&P500は以下のような値動きでした。
このチャートの詳細は後述します。
S&P500の超長期チャート 対数表示
ここまではどこでも言われる事実ですね。
だから長期で株式投資をやろうと言われる訳です。
インフレ調整という考え方
しかしインフレを考慮すると見え方は大きく変わります。
例を挙げましょう。
インフレ率が0%で、資産の上昇が3%の場合と、インフレ率が5%で資産の上昇が7%の場合、前者の方が実質的な資産は増えています。
(モノがよりたくさん買える)
過去にはインフレ10%を超えていた時期もあるし、一方21世紀は低インフレの時期が長く続いています。
インフレと同じ株価上昇では、資産価値は全く上がりません。
この事実を株価にも反映させると、実質的な株価の上昇下落がよりはっきりわかります。
今回インフレ調整後のリターンを紹介しようと思ったのは、取り上げているサイトやYoutubeがほとんどないことと、超低インフレ (デフレ) が続いている日本の私達の肌感覚に合うためです。
インフレ調整後のリターン 年率 2.99%
以下のサイトから、インフレ調整後S&P500のデータを拾います。
S&P500の超長期チャート インフレ調整後
インフレ調整後の最も古いデータは、1927年12月の277.35です。
インフレ調整前は17.66
実際にはこの時は、まだS&P500指数は誕生していません
そして直近の数字は2021年7月23日の4,411.79です。
これを計算すると、インフレ調整後は 94年間で 15.9倍になっています。
この期間では年率 2.99%のリターンとなります。
冒頭で書いたように、株式市場は年率7%とかで上昇し続けていると聞いた事があるのではないでしょうか。
確かにこの期間でもインフレ調整前では 249.8倍になっており、これは年率 6.05%に相当します。
しかしそれは名目上の話で、インフレを加味するとたったの 3%になってしまいます。
逆に言えば、94年間の平均インフレ率は6.05 – 2.99 = 3.06% と計算できます。
|
1927年の株価 |
2021年7月の株価 |
上昇率 |
年間リターン |
インフレ調整前 |
17.66 |
4411.79 |
249.8倍 |
+6.05% |
インフレ調整後 |
277.35 |
4411.79 |
15.91倍 |
+2.99% |
税金やコストを考慮すると 1.78%/年と、悲惨な結果に
売却益にかかる税金を考慮すると、もっと手元に残るリターンは下がってしまいます。
仮に6.05%の利益に20%の税金が取られると、手取りは4.84%となり、インフレ率を考慮すると4.84 – 3.06 = 1.78 %/年になってしまいます。
株って意外と儲からないと思いませんか?
実際にはNISAやiDeCoという税制優遇もありますし、長期保有ならば毎年20%の税金が取られる訳ではありません。
厳しめに算出するとこうなる、という数字です。
詳しくは税の繰延効果について
逆に株の売買手数料や、インデックスファンドの保有コストは含まれていません。
なので1.78%/年という数字はかなり実体に近いと考えられます。
世界最強の米国株インデックスを94年間の鬼ホールド、いや地獄、大魔神ホールドを続け、しかも現在は史上最高値更新中の絶好調期でたったの1.78 %/年です。
資産運用の考え方を変えるべき
資産運用は資産を増やすものではなく、資産を守るために行う。
上の結果を見て、このような考え方で継続するのが良いと感じました。
しかし資産運用は米国を中心とした、世界株式がベストなのは変わりません。
リターンが低いからといって、リスク許容度に応じて、債券を組み入れたりコモディティを入れたりするという王道が揺らぐ事はありません。
王道の投資法で、少ない資金でお金持ちになれるとは思わない方が良いでしょう。
結果的にそうなるかもしれませんが。
投資や投機で金持ちになるためには、リスクを上げるしかないのですが、それはほとんど上手くいきません。
身も蓋もない話ですが、本業や副業で収入を増やすしかないでしょう。
まとめ
・しかしインフレ調整後は 3%/年まで低下
・税金やコストを考慮すると 2%以下に
・資産運用は資産を「守る」ためのものと考えよう
・お金持ちになるにはやっぱり収入を増やすしかない
この結果は米国株に投資をする人全員が知るべきものだと思います。
久しぶりの自信作です(๑•̀ㅂ•́)و✧
コメント
一年以上前の記事にコメントさせていただきますが、インフレ調整後のリターン 年率 2.99%というのは配当再投資が行われているのでしょうか?
「S&P500の過去30年リターンは年率9.9%でした」この記述の方は配当込みで書いてありますが、
2.99%の方は株価の推移のみを見ているのではないのでしょうか?
インフレ調整後でも年利が6%あるというような記事もあり、おそらくこっちの方が正しいのではないかと思うのですが。よろしくお願いします。
ご質問ありがとうございます。
ご指摘の通り、私の年率2.99%と言う数字には配当は考慮されていません。
S&P500インデックスそのものが配当を考慮していない(日経平均も同様)ためです。
配当にも税金がかかるし、米国外なら尚更です。
配当を考慮するなら税引前で2%、税引後1.5%程度、ここから上向くかなと思います。
またこの期間はやや悪い期間を切り取っているとも考えられます。
(スタートが大恐慌前)
鋭いご指摘ありがとうございました。
回答ありがとうございます。凄く勉強になりました。