はじめに 前回のおさらい
前回は、リスクを考えずにリターンを追うのがどれだけ危険か、シミュレーションを用いて説明しました。
例えば期待リターン7%、リスク22.75%(円換算のS&P500を想定)の場合、
初期資金100万円、毎月3万円で30年運用すると、元本は1180万円。
下位5%は800万円、元本から -32%のマイナス
下位30%は 年率2.6%
となりました。
そのため安定したリターンを目指すならリスクを抑えることが肝要だ、というところで終わっていました。
今回はその続きです。
債券を混ぜるとリスクは下がる
非常にありふれた話ですが、株式に債券を組み合わせると、リスクあたりのリターンは向上すると言われています。
以前にも分散としての債券投資の重要性は何回か書いています。↓
これまではシャープレシオの改善にフォーカスしていましたが、今回はうまくいかない(=運が悪い)時のリターンがどれほど向上するかを調べます。
必要な情報:債券のリターンと相関係数
債券のリスクリターン
前回の確率別リターンを計算するためには、債券のリスクリターンと、株式との相関係数が必要になります。
ただ債券と一口に言っても、
・公債か社債か
・満期までの期間
によって、預貯金と同様の安全性にも、株式よりもハイリスクにもなり得ます。
ここではデータが多いため、
・10年かそれ以上の長期債
で考えます。
ここではIEF, TLT, EDVという3つの米国債ETFを紹介します。
いずれも長期米国債ETFです。
まずリスク(=標準偏差)についてですが、概ね満期までの年限に比例しています。
次に長期米国債のリターンを考えます。
ジェレミーシーゲル氏の有名なグラフがあります。
過去200年以上にわたって、株式や債券、現金のリターンがどうだったかというものです。
ここで長期債券 (Bonds) のリターンは年率3.5%(インフレ調整後)でした。
おそらくここでいうBondsとは、上のIEFが最も近いと考えられます。
それ以上の長期に関してはデータがなく不明ですが、感覚としてTLTは4%、EDVは4.5%くらいではないかと思います。
債券の相関係数
次に相関係数を考えます。
東証に上場したグローバルX 超長期米国債 ETF(180A)の公式Youtubeから引用します。
そこでは米国株との相関として、中期(7-10年)米国債は相関係数が0.31、超長期が -0.04となっています。
数字が出揃ったので計算
長くなりましたがようやく準備ができました。
前提として、米国株:米国長期債券=6 : 4 で投資するとします。
前回は米国株がリターン7%、リスクが22.75%で計算しました。
今回は米国株のリターンをシーゲル氏の通り6.6%(インフレ調整後)とします。
また先ほどの米国債ETFには、日本円建てで見た場合、為替リスクが考慮されていないので、乱暴ではありますが+2%したリスクを使うことにします。
先ほどの図でS&P500とIEFは相関係数が0.31でした。
では米国株 60%:IEF 40%のリスクリターンはどうなるでしょう。
先ほど200年では債券のリターンが3.5%でしたので、
米国株+債券(IEF):年率リターン 5.36%、リスク15.05%
となりました。
ポートフォリオのリスクリターンは、以下のサイトを使いました。↓
http://guide.fund-no-umi.com/tools/aa.html
シミュレーション結果
前回と同様に、初期投資100万円、毎月積立3万円、30年間運用(投資元本1180万円)とします。
米国株のリターン6.6%、リスク22.75%の場合↓
債券を入れたリターン5.36%、リスク15.05%の場合↓
もちろん期待リターンは下がりますが、下位30%のリターンは1724万円→1910万円と改善しました。
さらに顕著なのは下位5%で、742万円→1044万円と300万円以上変わりました。
これは債券をIEFにした場合のシミュレーションです。
もしEDVを組み入れると、リターン4.5%、リスク21.23%、相関係数 -0.04なので、
米国株+債券(EDV):年率リターン 5.76%、リスク15.78%
となりました。
同様にシミュレーションすると、下位30%のリターンは1724万円→1910万円→1999万円とさらに改善。
さらに顕著なのは下位5%で、742万円→1044万円→1092万円と、ほぼ元本レベルまで改善しました。
筆者はEDVに分散投資
債券を組み入れるだけで長期のリターンが安定しましたが、超長期国債にすることで、さらにその傾向が強くなりました。
私は現在、NISA成長投資枠でEDVを投資しています。
3 – 4年かけて、資産全体の15−20%を投資する予定です。
ゴールドや仮想通貨も分散になる REITは×
だんだんマニアックになってきますが、債券以外にも分散するとよりダウンサイドリスクが低くなると考えられます。
伝統的にはゴールドなどのコモディティ、最近ではビットコインを代表とした仮想通貨が候補となります。
ただ変数が増えすぎて、またデータに乏しいためどの程度リスク低減に寄与するかは分かりません。
私はゴールド+仮想通貨で資産の10%を超えない程度に投資しています。
REITもよく分散投資の1つに挙げられますが、外国株インデックスにはすでに含まれており、追加の投資は不要と考えます。
まとめ
・株式に債券を加えるとどれほどリターンは安定するのか
・特に下位5%で著明な改善
・超長期米国債だとさらに改善
・ゴールドや仮想通貨も分散におすすめ
面倒臭いとか、資産形成期だから債券は不要という意見、私は反対です。
債券の重要性は散々語られていますが、実際に数字を出してシミュレーションしたのを見たことがなかったので、今回調べてみました。
参考になれば幸いです。
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