はじめに 新ファンドの紹介
日興アセットマネジメントから、8月31日にTracersシリーズと題した2ファンドが発表されました。
Tracers グローバル2倍株(地球コンプリート)
Tracers S&P500 ゴールドプラス
という2商品です。
ここではグローバル2倍株(地球コンプリート)ファンドの概要、注意点、どんな人におすすめかを書いていきます。
ファンド紹介
概要
このファンドを一言でいうと、「全世界株の2倍ファンド」です。
世界中のETFや株式先物を使い、純資産額の2倍になるようにポジションを取ります。
一国(=米国)の投資割合が100%を超えないというルールがあります。
オルカンの米国割合は 61%なので、全世界株よりも米国の割合が少し低くなっています。
その分新興国などの割合が高くなっています。
大手のネット証券5社、PayPay銀行にて、手数料無料で買うことができます。
実はこのファンドは新商品ではなく、2021年12月に運用が開始されています。
それが8月31日に名称変更、信託報酬引き下げが行われました。
コスト
売買手数料はなく、名目上の信託報酬は 0.1991%とレバレッジファンドとしては最安です。
加えて諸費用が0.1%以内と記載されています。
これを踏まえると実質コストは0.3%前後になると思われます。
1年経過後の決算書で計算が可能となります。
こんな人におすすめ
経済評論家の山崎元さんは、「商品開発者が語る設計思想」のページの中で以下のように語っています。
若い人、まだ金融資産の額が小さいけど(将来稼ぎは増える)人的資本の大きな人がエクスポージャーを取っていくためには良い商品っていうか、夢のある商品、あるいは実用性のある商品になりうると思います。
また「ライフサイクル投資術」では、30歳までは資産の200%の株式を保有せよと書いてあります。
しかし今まではレバナスに代表される、日内変動が2倍の投資信託しか選択肢がありませんでした。
レバナスなどは価格逓減のリスクがあり、全財産で買ったとしても、2倍のエクスポージャーとはなりません。
一般人が「ライフサイクル投資術」を実践できる、唯一の投資商品と言えます。
またNISA、特にジュニアNISAで買うのもおすすめです。
非課税枠が限られているため、その中で利益を最大化するためにはレバレッジは良い手段となります。
私はジュニアNISAでレバレッジ商品を買っていますが、来年はこのファンドを買うかもしれません。
注意点
まず規模が小さいため、償還のリスクがあります。
2022/09/01時点での純資産は5.7億円。
仮にジュニアNISAで投資すると、回収できるのは18年後。
そこまで持ってくれるかと言う不安があります。
そもそも繰り上げ償還の要件に「純資産10億円未満」と書いてあります。このまま増えなければ償還されてしまうことを意味します。
運用期間が2031年までと書いてあるのも不安です。
同社のグローバル3倍3分法ファンドも当初は期限付きでしたが、その後無期限になったので、その流れを期待したいです。
今後の純資産額に要注意。
株価が半値になったら終わり? シミュレーション
2倍のレバレッジをかけているので、株価が半分になれば価値が0になってしまうのでしょうか。
レバナスなど日内変動を2倍にしている場合は、NASDAQが半値になってもゼロにはなりません。
一方自分で先物取引を利用していて、資産の2倍の金額を買うとします。
その商品が半値になったら、含み損=証拠金となって資産はゼロになってしまいます。
このファンドはどうなるのでしょうか。計算してみます。
実際に計算しました。結果がこちら↓
初期値100に対して、リバランス無しのケースは2.4 まで下落しました。
一方実際の運用に近い、リバランスありの方は純資産 28.08 までの下落にとどまりました。
大幅な損失となるものの、仮に半値になってもファンドは存続できるということがわかりました。
筆者の結論 投資価値あり
ファンドのコンセプト、保有コスト、暴落時のシミュレーションなどを考えると、このファンドはおすすめできる商品です。
特に若い方など、リスク許容度の高い方は検討の余地あり。
ただ早期償還のおそれもあるので、純資産10億円を超えるまで待っても良いかもしれません。
他のファンドを組み合わせることによって、よりバランスの取れたレバレッジポートフォリオを組むことができます。
例えばこのファンドと楽天USA360 を50%ずつ保有するとします。
これらを50%ずつ合わせると、米国株95%・非米国株50%(合計145%)、米国債に135%のエクスポージャーとなります。
株式に占める米国株の割合は 65.5%で、オルカン(日本除く)の米国株 64.9%と一致します。
また株:債券がほぼ1:1になり、これは日本の年金ファンドGPIFとほぼ同じ構成となります。
つまり非常にバランスが良いアロケーションになっていると言えます。
保有にかかるコストは2つを平均すると、実質コストで 0.4〜0.45% 程度です。
レバレッジをかけていることを考えれば、かなり安いと思います。
まとめ
・2022/08/30 改名とともにコストダウン
・暴落してもファンドは耐えられる
・若い方などリスク許容度高い人におすすめ
・USA360と組み合わせるとバランス良い
いかがでしたか。
グローバル3倍3分法ファンドでレバレッジの先駆者となった日興AMが、また世に新たなレバレッジファンドを誕生させました。
まだ純資産は小さいですが、長期投資の有力な投資先だと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
コメント
山崎元さんは開発者ではないと思いますよ?
ご指摘ありがとうございます。
対談ページのタイトルが「商品開発者」とあったので勘違いしていました。
記事を修正させていただきました。